第214回
何と63%の現役高校生が 憲法9条の改正に反対!
大新聞は何故報じない?!
2013年5月11日号
ボクが半年に一度日本へ帰ってくると、必らず出演するテレビ、ラジオの番組がある。その中でもTBSラジオの土曜朝の人気番組「永六輔その新世界」は、長年欠かしたことがない。多い時は、年に5~6回出演するばかりか、長い時は3時間にわたって出演することもある。この番組の人気は異常に高く、NHKも民法も、この時間帯だけは特別視して、?争わない?状況が、長い間続いている。リスナーの平均年齢は少くとも60歳台だから、ボクは今もって「有名人」なのである。
永六輔は、60年間ずっとボクの憧れの的であり、尊敬しつづけて来た畏友である。それでもボクが?永ちゃん?と呼ぶのは、二人が早大の同級生だったからだ。実は彼が約1年年長なのだが、4月初めと3月末の生れのため、同級生なのだ。彼は有名な病院嫌いだったが、近年いろいろな病気に悩まされて来た。ある時ボクは、声涙ともに下って、病院に行ってもらった。その効果が現われて、無事番組を続けている。永ちゃんが「巨泉に救われた」というのは、それだけの理由である。
以前、この朝番組に出る前の晩は、定宿であるホテルオークラに泊っていた。それが近年は浅草にあるビジネス・ホテル「サンルート浅草」に泊るようになった。リタイアして収入も減っているし、当り前の経費削減である。ボクがアベノミクスのような、いわゆる「成長戦略」に反対なのは、成長や便利さだけを求めるには、日本はふさわしくない国と考えるからだ。高齢化少子化のトップを走るわが国は、成長してバブルを迎えるより、皆で仲良く、つつましく生きる国になるべき、というのが正解と信じている。年齢や収入に準じて、生活のレベルダウンをする事は、恥しいことでも何でもない。皆堂々と実行すれば良いのだ。少くともボクはそうしている。
先週も浅草に泊り、朝食後インターネットで、愛読紙東京新聞のサイトを開いた。トップに飛びこんで来た文字は、「高校生、6割が9条改正に反対!」であった。すぐにクリックして開いた。それは、日本高等学校教職員組合の憲法意識調査の結果であった。これは昨年11月に、28道府県と4政令市の144校、1万2480人の高校生を対象に実施されたものである。憲法9条を「変えない方がよい」と答えた高校生は63%、’08年の前回調査より2・1%増えた。「変える方がよい」は、僅か14・4%だったという。
変えない方がよい理由は「戦争への道を開くおそれがある」が75・9%と圧倒的。変える方がよい理由は、「現憲法の9条では、対応できない国際的問題が生じて来ている」が32・2%で第1位で、「北朝鮮や中国などの脅威」を挙げる生徒もいた。
ボクは感動して、そのままTBSに入り、永ちゃんと優秀アシスタントの外山惠理アナと、約20分この話をした。「ゲームとサッカーばかりしている」と馬鹿にしていた現高校生諸君にあやまらなければならない。君達はちゃんと見ているのだね。我々とは違う視点で考えている結果なのだ。その視点とは、「もし憲法9条のタガがはずされて戦争になったら、銃をもって戦うのはボクたちだ」というものに違いない。
思い出して欲しい。昨秋の第187回の当コラムである。曰く「戦争とは、爺さんが始めておっさんが命令し、若者たちが死んでゆくもの」。これは大林素子さんの力作「MOTHER 特攻の母 鳥濱トメ物語」の中で、特攻隊長が、出撃してゆく隊員に、「戦争とは何か」を告げるセリフであった。
現在にたとえれば、「爺さん」は、尖閣諸島の国有化のタネをまいた石原慎太郎維新の会共同代表だろう。「おっさん」は当然、?国防軍?を平気で口にする安倍晋三首相である。彼らはおそらく死なない筈だ。扇動したり、命令したりするだけで、自分達は安全なところに居る。前の戦争の時もそうだった。そして実際に死んでゆくのは、罪もない若者なのだ。それを知っていたからこそ、9条改正に6割以上の若者が反対しているのである。おそらく前の戦争のことは、学校で教わったに違いない。安倍政権は、この?教育?さえも改悪しようとしている。怖ろしい企みである。
そしてもっと怖ろしいのは、これだけ重要な調査結果を大きく報じたのは、ボクの知る限り東京新聞だけだった事である(調べたら毎日の地方版に載っていたそうだ)。
それどころか朝日はこの結果を無視し、「自衛隊は憲法違反ではない」と考える高校生が急増という視点の記事にしていた。9条改正反対が63%、自衛隊問題が45%である。これを45%だけ取り上げる朝日の姿勢が解らない(東京は両方取り上げていた)。朝日はいつから体制のイヌになり下がったのか。ボクは来月から朝日の購読をやめる。
日本国は怖ろしい坂道を下っていると思う。ボクが早大の新聞学科に学んだ時、恩師木村毅先生は、われわれの前で自らを恥じて告白された。先生は元新聞記者だったが、軍部を怖れて「大本営発表」だけを報じていたわれわれジャーナリストにも、大きな責任がある、と。そしてボク達に、「君達は体制批判を怖れないジャーナリストになってくれ」と頼んだ。その大学生たちは老い、ほとんど80歳以上になった。亡くなった人の方が多いだろう。
9条改正に6割以上が反対する高校生には選挙権がない。彼らと、平和を愛するわれわれリベラル爺さんの間に居る多くの日本人が、安倍政権を支持しているとすれば、日本人は何と洞察力のない、情けない人種になり果てようとしているのだろう。嗚呼。

