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第213回
禁じ手(96条改正)を 使ってまで憲法を変えたい
安倍の真意は怖ろしい

2013年5月03日号

 メジャーリーグの予想に2週を費している間に、春はどんどん深まっている。国内では淡路島の地震、福島の汚染水漏れ、国外では北朝鮮のミサイル問題が話題になった。淡路島は震度6弱という強震だったが、死者はゼロであった。改めて地震が怖いのは、大都市で起きた場合と認識させられた。淡路島は娘婿の実家があるので急いで連絡したが、怖いほどの揺れだったという。ただ過疎地なので人的被害は少なかった。

 生れ故郷の東京を捨てて地方に住むようになって約40年になる。仕事で上京するたびに、もし地震が来たらと恐ろしくなる。死ぬまで大都会に住む気はない。それでも多くの人は都会を目指す。仕事があるからである。

 福島の原発がどうなっているのか、大多数の国民は知らされていないと思う。国や東電が「収束宣言」をしてから随分時間が経つが、実は全く収まっていないのである。「安全神話」と同じく、国民を安心させる手段としか思えない。本当の事を言えば、収束には何十年もかかり、現在は人が住める状況ではないのではないか。民主党内閣時代、鉢呂吉雄大臣が「死の町」と言って更迭されたが、鉢呂さんは本当の事を言ったのだ。ここにも「知らしむべからず」という姿勢が見える。

 北朝鮮に至っては、まさに茶番劇である。どう考えてもあの国が日本やアメリカにミサイルを打ちこむなんて有り得ない。そんな事をしたら、翌日あの国は無くなってしまうだろう。それは金正恩をはじめ、北の首脳部は百も承知の筈だ。それなのに安倍首相は、マジメな顔で「国民の生命と安全は全力で守る」なんて言っている。それに対して記者団は、「何をどうやって守るんですか?」とは聞かない。「先制攻撃をする」から、「地下シェルターをつくる」まで、オプションは沢山あるのだが、誰も聞かないし、聞いても「国家秘密」や「同盟国との協議」を理由に答えないだろう。そしてわれわれは、何も「知らされない」で、不安の中生活している。

 その安倍内閣の支持率は、最新のデータで60%で、前回より5%ほど下っているが、かなり高い。理由はハッキリしている。支持のもとは「経済政策」が50%で、ダントツだからだ。外交安全保障(14%)、社会保障(11%)、原発やエネルギー政策や憲法改正はたったの6%だ。つまり多くの人は、円安株高という現象を何となく喜んでいるに過ぎない。円安でうるおうのは輸出産業だけ、一般国民は原料(ほとんど輸入)の値上りで、支出が増えて困っている。ボクは大分前から警告していたが、鉢呂さんと一緒で無視された。株高なんて、極く一部の富裕層が儲かるだけである(ボクも富裕層に属するのだろうが、株はやらない)。

 要するに、ここにトリックが隠されているのだ。長いデフレで、閉塞感の中に居た国民に対して、かなり禁じ手に近い方法で、インフレ(金融緩和)宣言をした。本当の意味も結果もよく知らぬまま、国民はムードで安倍支持になったに過ぎない。ただ5%マイナスしたという事は、徐々に不安をもつ人が増えたという事だろう。

 安倍首相は、それが表面化する前に、7月が来ないかと念じている筈である。何故なら彼にとって「経済」はムードを煽る道具に過ぎず、本当の狙いは別のところにあるからだ。

 それはたった6%の「憲法改正」である。安倍は先日、「国づくり」に関する有識者会議で、「ふるさと」や「愛国心」について熱弁をふるった。曰く、「日本人は生れ育った地を愛し、公共の精神や道徳心を養って来た。ふるさとをどう守ってゆくかを考えて欲しい」(傍点筆者)。見事なウソツキと言う他ない。もし日本人がふるさとを愛するなら、減反などでまさに荒れなんとしている生れ故郷に追い討ちをかけるTPP交渉に、何故積極的に参加するのか。TPPは「ふるさとを捨て、弱肉強食のグローバル経済に参入すること」である。

 本音はボクが傍点をふったところにある。「公共の精神や道徳心」を強調することで、現憲法が保障してくれている、「個人の権利(人権)」に制限を加えたくて仕方がないのだ。それでなくても「知らしむべからず」なのに、もっと制限を加えて、政権の思う通りにあやつれる国民にしたいのである。そのためには現在の憲法が邪魔なので、これを改正するために、まず人気を取り、その勢いで改正してしまおうという訳だ。

 そのためには、国民が好況ムードに浸っている間に、参院選に勝ってしまおう、である。もっと許せない手を使おうとしている。それは憲法96条の改正をもち出したことだ。これは憲法改正の方法論を明記した条文である。それによれば、衆参両院の3分の2の議員の賛成で、憲法改正の国民投票が実施できる。それを2分の1(たった51%!)にしてしまおうというのだ。

 ちょっと待ってくれ。改正反対のボクでも、全議員(国民に選ばれた)の3分の2までが改正すべしというなら、認めるにやぶさかでない。ただ憲法改正などオクビにも出さず当選して来た議員を含めて、ただの過半数で決められたらたまらない。巧言の安倍は、その理由として「国民の皆さまが変えたがっているのに、ハードルが高すぎる」というような事を言っているが、黙れ!

 そもそも憲法とは、国民が守るの変えるのという法律ではない。国家権力(時の政府)の行使を制限するためにあるものだ。軍部が暴走して、数百万人の国民の命を奪った戦前戦中のレジームへのタガとして現憲法は存在する。それを変えて戦前への回帰を計る現レジームは、禁じ手さえ使おうとしている。止めようよ、みんな!

今週の遺言

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